『わたしを離さないで』

わたしを離さないで

わたしを離さないで

読み中。怖い。これからひどいことが起こるんだという恐怖感でいっぱい。でもページをめくってしまう。読了後に追記るかも。
ということで追記。
そしてネタバレ。
 
臓器提供用のクローンネタは珍しくないけど、私がいちばん恐ろしく感じたのは「わたしたちがしてあげられたことも考えてください。」「わたしたちがいたことであなた方の人生が多少はましになったはず」と語るエミリ先生。さらに抵抗や逃亡の意思を示さない、というかそんなことを考え付かないクローンたちも怖い。そのように教育されたからといえばそれまでだけど、ちょっと吐きそう。まるで家畜に対する態度だ。ブロイラーか放し飼いかの差。「生きるために食べる」「生きるために臓器移植をする」どちらも生きるためという目的は同じだし、「提供用クローンに魂があるのか」という論争が「動物に魂はあるのか」という議論と同じ文脈で描かれている。
ただ、ほとんどの動物で基本的に共食いはない(例外はあるけど)。獲物になるのはほかの動物だ。その流れで家畜のことを許容することは可能だ。それだけに、提供者と社会の関係の異常さが際立っている。保護官たちですら彼らを人間以下の存在と捉えているのではないか、そのことに気づかされる冒頭の発言は本当に衝撃だった。
誰かの死を待ち望む脳死移植と本書の提供者、どちらも歪だ。でも、本人の意思と無関係な分、提供者のほうが悲惨かもしれない。